第155期 #9
沈む夕陽を背に、街には終末的な光景が広がっていた。
私が見渡す限り一面の人だかり。動くもの。うごめくもの。
自分の通学路である街にゾンビが溢れるなんて、まるでホラー映画みたい。
悲鳴がそこら中から聞こえてくる。舞う血飛沫が景色を紅に染めていく。
雑居ビルから地下鉄の階段から、ゾンビになった人達がわらわらと出てきては次々と通行人におどりかかる。
襲われた人は頭からゾンビに食べられて…… むしゃむしゃ、ごくり。
「亜美!」
混乱の中で立ち尽くす私を、友達の絵美が見つけてくれた。
「早くこっちに!」
絵美が叫びながら私の手を握り、路地裏へと引っ張る。
「良かった、無事で本当に良かった……」
涙で顔をくしゃくしゃにした絵美が安心するように笑った。
うん、私も嬉しいよ。だって……
絵美があまりにも美味しそうに見えるんだもの。