第155期 #5
「雨は嫌いだな」
ざあざあ、
「…何故だ。」
ざあざあ、
「雨は、あの日を思い出す。」
ざあざあ、
「あの日、とは?」
ざあざあ、
「なんだと思う?」
ざあざあ、
「…分からない。」
「それはね、」
女がこちらを振り返った。
口角が歪に上がる。
「大切なオトモダチを殺した日、だから。」
「そうか。」
「…驚かないんだね」
ゆっくりと女の隣に立った。
「俺は雨が好きだよ。」
ざあざあ、
「どうして?」
ざあざあ、
「雨が存在する限り、忘れないから。」
「…?」
「おれをころしたおまえを、わすれないから。」
横を見れば、驚愕で目を見開く女が見えた。
忘れたなんて言わせないよ。
ねぇ、どうしてころしたの。なにが原因だ?
ねぇ、寂しいよ。