第155期 #4

私しといふ存在

私しといふ存在は……
孤高の哲学者・アージュは言った。
私しはなぜ私しなのか…
この問いを説いたものは一人もいない。
神を信ずる者達ですら説ける訳がない。
説けるはずもないだろう。

アダムとイブが禁断の…
そんなの誰が作ったかも分からないお伽噺だ。
自分がなんのために産まれ、なんのために生きて、なんのために死ぬのか。
そんなの誰にも分からない。

アージュは言った。
私しは、私しの人生全てを賭け、この問いを説いてみせる……と。
が、答などあるはずもない。

イエス・キリスト

神の化身と呼ばれた男。
人々は彼を崇め、称え、そして崇拝した。
が最後にどうなったか。
人々の犯した罪を、自らが自害することにより浄化させた。
そんなの作り話だ。
イエス・キリストは、信頼していた弟子に裏切られ、そして殺された。
こう聞くとキリストなんてちっぽけな存在だろう?
神は、人間が創った都合のいい人形でしかない。

じゃあ私しは何者なのか。
誰によって創られたのか。
そして私しはなぜ私しという存在なのか…
アージュは答の導き出せないまま死んでいった……こう書き残し………………。

-ワタクシトイフソンザイハ-



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