第155期 #14

とある天使、二人の会話

「なぁ、神様っていると思うか?」
「何だよ、いきなり?」
「いやさ、俺達って偉大なる父を見たことがないだろ? 本当にいるのかと思って」
「大天使ミカエル様は見たって」
「光だけだろ。神々しく輝く光と虹だけじゃあ、他の天使が影武者してても分かんないぞ」
「怖いこと言うなよ。大体、他の天使が父を偽装してどうするのさ」
「それは色々ある。一つは、まとめる為さ。俺たち、天使は自然発生したものだろ?」
「うん、いつの間にか、そこにいた」
「そうそう、いつの間にか。だから、俺達、天使は何もしなければ、そこらの竜やグリフォンと変わらない。個別にただ存在してるだけだよな」
「うん」
「でも、そこに共通の概念……というか、関わり、だな。があるとする。これが偉大なる父って訳だ。そうすると、同士よ! って天使同士でつるむ理由になるんだ」
「それは分かるけど……何で天使同士でつるまなきゃいけないのさ?」
「うーん? ……えーと、そうだ! これは、父を偽装する理由の一つでもあるけど、他の天使が権力とか武力を欲しいとするよな。そうすると、数がいる方がいい。それに、出来れば、命令出来る方がいい訳だ。天使が天使の上に立つと必ず権力争いになるからな。だから、偉大なる父がいて……」
「でも、それも誰かが権力とか武力を欲しがってる前提だろ? ミカエル様だって、ラファエル様だって、普段はお酒も飲まないおじいちゃんだよ? イメージ沸かないなぁ」
「……だよな」
「うん」
「じゃあ、やっぱり父はいるのかぁ」
「うん。……でもさ、僕も父がいるのかなって思う」
「何で?」
「だって、僕達は自然に生まれたし、大地や空は僕らが生まれる前からある。父が創ったっていうけど、その後は全部放置。世界に何の影響も与えてないんなら、本当にいるのか分かんないよ。いても認識されないのなら、いないと同じ……」
「……」
「なんてね。人間の受け売りだよ」
「……いないのと同じ」
「やっぱり、そこが気になる? 僕もそうなんだ。いないも同じ、否定の言葉だけど、肯定の言葉でもある。認識されたら、存在するんだもんね。神と認識されたら神になる訳だ! こういう場合、何をすれば神と認識されると思う?」
「そりゃ……人間を救うとか?」
「確かに! だとしたら、神は人間の中にいることになる! 僕達、一度も人間を救ったことなんてないんだから!」



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