第154期 #3

俺はスパイ

俺は元スパイだ。
訳あってやめたが、現役のときは大活躍したもんだ。
今は小さな部屋でゆっくりと余生を楽しんでいる。
毎日三食しっかりと食べ、適度な運動もして、スパイだったころにはいなかった友達と、昔話や武勇伝を語り合ったりして充実した生活をおくっている。
今日は君たちに俺の武勇伝を聞かせてあげよう……。

俺はスパイだ。
誰にも正体がバレぬよう、息を潜めて特務に勤しむ。
今日は目標のターゲットを尾行し、ターゲットの全てを記録する。
例えば歩き方。
ターゲットは足を地面に着けるとき、限り無く足音のでないように歩いている。
ターゲット情報によれば、自衛部隊の元軍人で、世界各地の戦場を生き残ってきたらしい。
こいつはなかなか手強そうな相手だ。
だが俺はめげない。
俺は一ヶ月の尾行で、ターゲットが日曜の午後に、必ず行く喫茶店を突き止めた。
よし、今日だ。
今日こそ任務の目的を果たすときだ。
いつものようにターゲットが喫茶店に向かう。
俺は先回りし一足早く喫茶店で待機する。
ターゲットがくる。
いつもの決まった、一杯のホットコーヒーと、マスターオリジナルのサンドイッチを頼む。
だが俺は知ってるぞ。
注文を済ませるとターゲットが一度トイレに行くことを。
そして注文したものが出来上がり机の上に並べられてから出てくることも。
そして…俺はターゲットがてでくる前の僅かな時間で、誰にも気づかれないようにホットコーヒーに毒をいれた。

どうだ?すごいだろう?
あぁ、懐かしいな

ニュースです。
今日の午後、某喫茶店にて、元自衛官で、様々な名誉ある賞を受賞してきたA氏が、殺害されました。
目立った外傷もなく、警察は死因を、コーヒーの中から検出された青酸カリによる毒死とみています。
犯人は……………



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