第153期 #4

貪欲


「あんたなんて嫌い」


グサッ。
言葉は凶器となって、私の心臓に突き刺さった。ズキズキ。ドクドク。傷ついた心が血を流している。

「だいっきらいよ」


出血は致死量に達したのにも関わらず、私は生きてる。死ぬほどの傷みを受けて、まだ生きている。


あとどれだけ、生きればいいのだ。

また切り裂かれ、抉られ、潰されて、それでも死なず、生かされていくのだろう。

まぁ、生かすのも殺すのも自分次第だけれど。




「好きよ」



嗚呼、まだ生きていたい。死にたくはない。この幸福に埋もれていたい。
けれど幸せな内に消えたい。
あの痛みで死ぬくらいなら、この幸せに死にたいよ。だから殺してくれと云うのは卑怯だろうか。愚かだろうか。

けれど時間を止めてしまいたくて、私は目を閉じたのだろう。



Copyright © 2015 春桜 萩 / 編集: 短編