第151期 #20

桜の季節

 僕はこの春、大学に合格した。第一志望の大学だった。
 3月に合格発表があった。それはそれは喜んで、興奮状態になった。と思いきや、それはわりかしすぐ収まって、穏やかな時間を過ごした。読みたかった本を読んだ。東京で桜が開花したというニュースを見て、桜を探しに散歩にでかけたりもした。近所の公園で、一輪だけ咲いているのを見つけた。
 3月後半になると、大学入学のための準備が始まった。手続きは複雑で、説明会の度に貰う資料は重かった。一緒に入学予定の高校の友人と一つ一つこなしながら、シラバスを見て話し合った。大変だったけれど、大学生活が楽しみで仕方なかった。オリエンテーション等のために何度も大学へ足を運び、気づけばキャンパスの桜は満開だった。
 4月になってしばらくして、授業が始まった。何もかもが期待はずれだった。こんなに授業がつまらないなんて思わなかった。サークルも騒いでいるだけで、周りの同級生達も大したことなかった。なんなんだ、大したことないって。全部自分の人見知りのせいなのに。気付けば桜はひらひら地面に落ちていた。
 
 僕の通う大学はちょっと変わっていて、授業が始まるのが入学式より先だ。大学のキャンパスのカフェの窓から、もう葉桜が見える。入学式にはすべて散っているだろうか。 



Copyright © 2015 春川寧子 / 編集: 短編