第151期 #16
俺は殺し屋。もういくつもの命をこの手で葬ってきた。どれだけ殺したかと聞かれたときに
「お前は今までで食べたパンの数を数えているのか?」
なんて答えられたなら殺し屋としてはかっこいいのかもしれない。
だが俺は今まで殺してきた数を明確に覚えている。当然だ。なぜなら今まで俺が殺してきたのは家族や恋人、親友と俺に深い関わりがあったものばかりなのだ。殺される直前のあの表情を忘れるはずがない。
そんなに嫌ならばやめればいい?簡単に言ってくれるな。それが出来たならとっくにしている。俺はいち従業員の操り人形。従業員の命令にすら逆らうことも出来やしない下っ端の下っ端なのさ。
「ゆうーー!おやつの前にお片づけしちゃいなさーい!!」
そうこうしてるうちにまたオーナーから依頼を押し付けられる。お片づけそれは殺しの合図。ゆうと言う名の従業員はそんな残酷な命令をも遊び感覚で楽しもうと大型機の俺を引っ張り出す。
俺は黄色い身体を揺らしながら言われるがまま縦横無尽に首を動かし、仲間たちを口の中へ入れゴミ箱と呼ばれるイカれた名前の箱まで運び込む。
「使わないものはゴミ箱へ」
それが組織の方針なのだ。
ひと通り終えるとその従業員は報酬のおやつとやらを貰いに走って行く。まあ奴があれだけ必死になるんだ。おそらくヤバい薬かなんかだろう。
そして俺はこの空間の隅でまた考え込むのだった。いつになったら死ねるのか、あとどれだけの仲間を殺さなければならないのかと。決まって答えは出ない。
だから最後に俺は神に祈るのだ。あの従業員が早く俺に飽きるように。