第151期 #12

かなしいひよこ

 そのひよこはひよひよと鳴いていた。周りに親鳥らしき者はいない。その鳴き声はそんな状況を哀しんでいるような、弱々しさを感じる。

 ひよこは鳴き続ける。ひよひよと──。どこだい? ぼくのおかあさんはどこにいったんだい?
 ひよこは鳴き続ける。ひよひよと──。どこだい? ぼくのおとうさんはどこにいったんだい?
 ひよこは鳴き続ける。ひよひよと──。どこだい? ぼくのおねえちゃんは、おとうとは、いもうとは……どこにいったんだい?

 近くの電柱にとまっているカラスはうるさいよ、と言った。そして、この辺には君と私以外誰もいないよ、とも。
 それを聞いてひよこは、ひよひよひよひよと泣いた。

 憐れに思ったカラスは自分の家に連れていくことにした。が、カラスの家は高い木にありひよこには上れなかった。ひよこは泣いた。
 カラスは地面に家を作り、しばらくひよこと一緒に暮らしていた。ひよこが泣くことは少なくなった。

 しかし、カラスはまもなく死んだ。夜、寝ているうちに野良猫に襲われたのだった。

 ひよこは泣いた。ひよひよ、ひよひよ……コケコッコー。



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