第150期 #6

真夜中おやつ

何故こんな状況になってしまったのだろう。自分の部屋で頭を抱える午前三時。いっそ建物ごと燃やしてしまえばいいのか。そうして、マッチを探しているところで気づくのだ。
「なにしてるんだろう」
元から答えなど求めてないのだが、それでも何か返事が欲しかった。気分転換にコンビニでも行ってこよう。
周りが暗い中で明るい場所を見つけると安心する。人はそんなものだ。
中へ入れば知っている顔がいた。
「里中君」
「あ、川瀬だ。奇遇だな」
「奇遇というか、あれでしょ」
「そういうお前こそ」
苦笑いっぽく笑う彼につられて、こちらも苦笑気味に肯定の返事をする。
「こればっかりは仕方ないよな」
「私は放火しようかと思ってた」
「お前過激だな」
「それでマッチ探しててなにしてるんだろうってなった」
「それは冗談じゃすまない」
里中君に肩を掴まれ諭される。
「川瀬、きっと疲れてるんだよお前」
勝手に籠を持たされ、どっさり甘いものを入れられる。
「疲れた時には甘いものが一番だからな」
「奢ってくれないの?」
「甘いな。俺は今金欠だ」
「…………これ、買ってくるね」
レジへ行きお会計するとそれなりの値段にはなっていた。今更だけどこれ食べたら絶対太るよな、なんて考えつつも、もう店員さんが全て袋に入れ終わって私に向かって差し出していたので受け取って出口に向うと、里中君が待っていた。
「送ってやる」
「え、いいよ。そっちも大変なんでしょ。悪いよ」
「遠慮するな!」
悪いことしたな。先に帰っててくれて構わなかったのに。
「里中君、私の家ここだから」
「えっ、近すぎないか!?」
家とコンビニの間は徒歩三分。近すぎる。
「ありがとう。お互い頑張ろうね」
お礼を言って彼を見送る。
「あ、そうだこれやるラスト一つだったんだ。お前好きだろ」
渡されたのはプリン。密かに好きなのを気づいてたらしい。
「好きなものあると頑張れるだろ。だから頑張れよ」
私の頭に手を乗せながらそれだけ言うと、彼は寒空の下帰っていった。私と言えば、部屋に入るやいなや貰ったプリンを口へ運ぶ。滑らかな舌触りが堪らない。甘いものは偉大だ。あっという間に容器は空っぽになってしまう。
「美味しかった……」
とろけるような心地は目の前にあるパソコンで破壊された。画面には「近代文学レポート」とだけ書かれているだけ。
「さて、やりますか」
レポート、それが今夜中に私が倒さなければいけない敵の名前だ。



Copyright © 2015 pipipi / 編集: 短編