第150期 #10

夢か

家に帰ると玄関にコアラがいた。
オーストラリア国旗のスカーフを首に巻いている。
「おかえり!のぶくん!」
コアラが喋った。
「ごはんできてるよ!」
コアラが歩きながら言う。二足歩行で。
狭い1LDKのリビングの扉を開けると、うまそうなサラダの匂いが
漂ってきた。
俺は即座にサラダにパクついた。うまい。
「おいしいでしょ!」
コアラは俺の鞄を持ちながら言う。
「きょうはおやさいがやすかったんだあ!」
そうか、と俺は呟く。
食い終わり、俺はワイングラスに手を伸ばした。
そのとたん、コアラが爆発した。
そうか、ワイングラスはコアラの爆発スイッチだったんだな。
俺はワインを一口啜った。うまい。

俺はソファで目を覚ました。何だ?夢だったのか?
そう思いながらむくりと起き上がる。
香ばしいコーヒーの香りが漂ってくる。

「おはよう!のぶくん!コーヒーできてるよ!」

「ああ、おはよう。マイハニー。」

コアラは、俺の嫁だった。
そう、ここは、コアラの王国、コアラッコランド。
もちろん、俺も、コアラだった。



Copyright © 2015 桜 眞也 / 編集: 短編