第15期 #6

駅前の整形外科

 首を寝違えたらふつうどうしようもなくてそのままにしておいたら、昼過ぎには治っていたりするもんだけど、旦那の場合さ、外回りで車に乗ったりするモンだから、休んで、駅前の整形外科に行くってんの。整形外科っていったらさ、子供の頃なんて美容外科と間違えてたくらいで、てんで縁がないモンだと思ってたんだけど、寝違えに効くのかしら。って笑っていたら、こないださ、箪笥をちょっと、本棚をちょいと動かしたときに、うん、模様替え、趣味だから。寝ようと思ったら首が床につけられないくらい痛いの。高い枕でようやく寝られたっていうか、とにかく、いたたたたって感じの。上も向けなくてさ。缶ビール飲むとき、飲み干せなかったの。それくらい。首が後ろにいかないの。いたたたたって。子供抱っこすんのも大変だし、後ろは向けないし、ビールも飲めないしってわけじゃないけど、とりあえず余っていた旦那の膏薬はったんだけど一晩たっても効かないから行ったのよ、その整形外科。
 入ったら、おじいさんやおばあさんだけじゃないのよね、なんか老人クラブみたいなのをイメージしてたけど、ほんと、旦那の云うように老若男女、いるわけよ。子供もいるのよ。なんせ病院って行ってみるまでは人ごとじゃない。産婦人科だってそうだったわ。でも整形外科の面白いところって理学療法士とかいるところよね。なんてったって三百円ちょっとでマッサージしてもらえるんだもの。みんな腰痛とか肩こりで行っていたのねってもっと早く知っていたら行ったかも。でも子供小さいからじっとしてられないんだけどね。そう階段をとんとんとんとあがって二階に行くと窓から普通にお隣さんの窓とか見えているわけ。ベランダというか物干し台というか。そう駅前って行っても田舎だからさ。ほんとどっかのウチの二階のベッドで寝そべっている感じの。あたしは頸だったからさ、座って、聴診器みたいな電極つけて。吸い出しっていうの、カップみたいなの六個両肩につけてさ。吸い出すから内出血の痕が残るんだけどね、すごいよ、丸いのが。ほら。タコみたいでしょ。タコに吸われたみたいな。こないだうっかり市民プール行ったときにも、まあどうしようもないんだけど。噛まれたの?だって。訊いてくれてよかったーみたいな。でさ、旦那と同じ膏薬もらってきたわけで。結局薬が効いたのか電気が効いたのか、単に時間が経ったからか知らないけど、治ったの。



Copyright © 2003 安南みつ豆 / 編集: 短編