第149期 #16

愛か、それとも、

初めて彼氏ができた。だから、手作りチョコレートを渡そうと思った。

雪国育ちの私は室温10度でもさして寒いと思いもせず、トリュフチョコレートキットのパッケージを開けて作り始めた。
チューブに入ったチョコレートを湯煎でとかし、食品用ラップフィルムの上に6等分に絞り出した。6つめを絞り出しているときには、1つめは既に固まっていた。
固まっている1つめのチョコレートを手袋をはめた手に取り、丸める。が、チョコレートはボロボロに崩れるだけで一向にまとまる気配がない。
そう、寒い部屋で冷え症の私。とても掌がチョコレートを柔らかくするだけの温度にはなっていなかったのだ。そのことには気が付かないが、チョコレートがまとまらないという事実はわかった。
私は食品用ラップフィルムの上に出したチョコレートを回収し、再び湯煎にかけた。
チョコレートを溶かしている間、考えた。もう一度同じことをしても、結果は見えている。
最終形態から察するに、そこそこ丸くて、表面にシュガーパウダーやナッツ類などが付いてデコレーションできていればよいのだ。ただ、表面にナッツ類のようなものをつけるためには、やはり表面がある程度溶けている必要がある。
手袋をはめた手でチョコレートを丸めても、表面が適度に溶けている、という状態にはならなかった。手袋をしていては、自分の掌の温度がチョコレートには伝わらないのではないか。そう思って、私は丸く固まったチョコレートを直に掌で丸め始めた。

出来上がったトリュフチョコレートの見栄えは悪くない。白とピンクのシュガーパウダーとココナッツパウダー、クラッチナッツ。普通においしそうに見える。あとはラッピングをして、渡すだけだ。が、私には気になることがあった。作っている最中、気になって仕方がなかった。
これは、本当に食べても大丈夫なのだろうか?
出来上がったチョコレートに詰まっているモノは、愛か、それとも、手垢か……。



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