第148期 #8
私は今夜も塾の歸り、自轉車で滑走する。
周りは街燈がぽつんぽつんと在るだけでほぼ月明りだけが景色を浮かび上がらせてゐる。
歸路の途中にある忠魂墓地の前を一目散に通り過ぎ、そこから暫く行ったところで三叉路まで来た。周りに木がなく辺りは月明りで明るい。
ここからはあと数十メートルで家に着くのだ。
ホッと一息を入れたその時、一瞬、背筋に惡寒が走る。
その直後に、忠魂墓地の方角から一直線に青白いぼぅっとした光の塊が後ろから斜めに近づき、そのまま通り過ぎていった。
(えぇっ!今の何?)
「うわぁ〜〜!」
一目散に家に駆け込み、息切れしながら早口に一部始終を母に話したところ「ただの錯覺よ」と笑ふ。
然し、今でも私は『一生のうちで唯一体験した奇怪現象だ!』と思ってゐるのだ。
「あれは絕對に人魂で間違ひない」。