第148期 #6

夜色の猫

黒猫が一匹、寂しそうにしてる。
見かねた魔法使いが、空を真っ暗にした。
黒猫に、初めての友達が出来た。
闇。 その友達は喋らないけど、
黒猫のことを怖がったりはしなかった。
それが嬉しかった。

でもある日、 闇の中で泣き虫な女の子が「怖い」って泣いた。
神様がやさしく笑って、空に大きな丸を浮かべた。

月だ。

輝くそいつは、
黒猫には眩しすぎて、
目をつむった。
怖くなって、震えていた。

月が浮かんでも、女の子はまだ泣いていた。
神様は、空に光をばらまいた。
光る点々が空に浮かんで、
人々を照らした。女の子が、笑った。

やさしい光に包まれて、
なんだかくすぐったくて、黒猫は目を開けた。

綺麗だった。
そして、気付いた。

闇があって、初めて、月の輝きがわかること。
暗い空があって、初めて、星の美しさがわかること。

黒猫は何だか誇らしげだった。
女の子が寄ってきて、言った。

ありがとう、黒猫さん。
あなたのおかげで、こんなに綺麗な空が見れたわ。

黒猫は、笑った。



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