第148期 #4
イッカハキット
叶うかもしれない。
そう、心に言い聞かせていた。
でも、
「えっ、まだ、小説なんて、書いてるの?」
なんて、親友のあかりに、言われてしまった、わたし、仙田遠子。今年の12月で、二十歳になります。
「あんたさ、短大今年度で卒業だよ?いつまで夢見てるのさ」
さすがに、むっとした。
だって、まだ、二十歳。
働きながら書いてやる!
なんて、息巻いて、二年が過ぎ、今年の12月で24。
しかも、わたしは、働けなかったんだ。
いつも、仕事をクビになるとか、自分から、辞めていって、小説なんて、思うように書けない。
嗚呼〜やっぱり、わたしには、無理なのか?
でも、働くって? 解らない。
バイトもマトモに出来ない、無職のわたしが?
そもそも、わたしは、昔からそうだった。
いつも、中途半端。
バイトを転々としながら、半分、諦めない欠けてたとき。
ふと、名前が、気になった。遠子ってその名の通り、道のりは遠くて……やっぱり、諦めたくなる。なんて、人のせいにして……。
ある日の正月。親戚の集まりで、姪っ子の美咲ちゃんが、わたしに近づいてきた。
なに?
「遠子ちゃんって、小説書いるんだ?」
姪っ子の美咲ちゃんが、
「読んでもいい?」
「あ、うん」
正直、怖かった。
もう、何年もマトモに書いてないし、無職のわたしが言い話なんて書けるわけない……っていう、ネガティブ満載のコンプレックスを抱いた女の子の話だった。
それを
「面白いね。続きも読みたい!」
「えっ?」
正直、これで、終わりのはずたったのに。
でも、美咲ちゃんの笑顔や、瞳を観たらどうでもよくなった。
「遠子ちゃん、本当に面白いね。これ、投稿してみたら?」
「えっ?」
「遠子ちゃん。いつかはきっと、作家になれるよ!」
そんな淡い期待。
でも、それより、
いつかはきっと、か。
昔はそう思ってた。
応募してみようかな?
人のせい。関係ない。
仕事が巧くいかない?関係ない。
きっと、諦めない気持ち。
それを、忘れなければ、
そしたら、いつかはきっと、作家になれる。
そんな気がした。
未来に、仙田遠子と、いう名が記事に載る。
遠くても、諦めない気持ち。
そして、美咲ちゃんの「面白いね」の言葉。
イッカハキットの魔法の呪文。
わたしは、それを忘れていたのかもしれない。
だから、もう一度、夢を見る。
イッカハキット、喜んでくれる人がいる。
そんな気がしたから。