第148期 #18

鳥たちのいる風景

「優秀なお子さんがいてうらやましいです」
「いいえ、それほどでも」
「鷹を生むというやつですか」
「トンビですけどね」

 *

「仲が良くてうらやましいです」
「いいえ、それほどでも」
「おしどり夫婦ですね」
「いいえ、雁ですけどね」

 *

「情熱的なダンスですね。フラメンコですか」
「フラミンゴです」

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「夫婦ゲンカですか。お盛んですなぁ。お互いもんどり打って」
「いいや、めんどり打ってんだっ」「いいえっ、おんどり打ってんのよっ」

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「あのカップルは落ちるぜ。格好のカモだ」
「郭公“と”鴨の間違いでしょう?」

 *

「私は宙に浮くことができます」
「超能力者ですか」
「オウムです」

 *

「立て込んどるか揉めに揉めたか、これ以上話をこじらすことに、わしはやぶさかではない」
「立てコンドル、カモメに揉めタカ、ワシハヤブサ

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「声をからすか、うがいをするか」
「鵜飼じゃないっス、ウグイッス」

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 三面記事をお伝えします。
 今日、禿輪市の小黒市議が美水区役所に来庁。同市区で頻発している類似の掏摸・詐欺等の犯罪について意見を述べました。一方、会談した大歯区長はといえば、目を数回つぶり、口もつぐみ、熱心にうなずきつつ聞いていたかと思えば、ラジオの株取引ライブ放送に夢中だった様子。区長は「市議の話が単調で、耳に入れつつもずっと為替見通しが気になってしょうがなかった」と釈明しています。
 浦賀港では渦らしきものが発生。引きずり込まれそうになったペリー艦隊は、船員の機転によって最悪の場合を逃れた模様です。提督によると「ニッポンスキデスカラ、キタダケデマンゾク、コノヒコノトキ、ニッポンニャニッポンノヨサアリマス、ダカラ、イッペンノクイナーシ、トオモッタケレドモ、アノミハリバ、ミハヒバ、ミハヒバリンバン、エ、アア、ミハリバンネ、ヤツガシラセテクレタカラ、ミナブジデス、オッケー、カイコクシナサーイ」とのことです。
 事の詳細はちくま書店発行の冊子に掲載中。なお、当記事執筆には二十羽の刊行鳥さんにご協力いただきました。(担当記者)

 *

「先生。僕はガンなんですか」
「……」
「ガンならガンだとおっしゃってください」
「……分かりました。あなたの病名は」
「僕の、病名は……」
「ガンです」
「いいえ、僕はおしどりですけどね」

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「座ろう。立ち小便するつもりかい」
「ツバメ界じゃ普通のことさ。それに」
「……それに?」
「立つ鳥あとを濁さず、とも言ってだね」



Copyright © 2015 吉川楡井 / 編集: 短編