第148期 #11

太陽に出会ったから

確かに保護者には、とても大切な子供であろう。
しかし教師になったばかりの私には、非常に扱いにくい。
その生徒は頭は良く、小学生にしては弁舌も爽やか。
それが私の性格とは、全くと言っていいほど合わない。
彼の未来を開くことも、そして、閉じることも、私の手の平しだいだ。
今どき教師の言葉を疑いをせずに聞くような、そんな、保護者は居るまいが。
モンスターペアレントと言えば、わたしの母親が、それであった。
だが、私はそれで所謂イジメを初期の段階で防ぐことができたし、だからこそ母娘の関係は良い。
何らかの形で、この仕事が合わなかった場合には、早いうちに辞めてしまおうと思っている。
惰性に任せて信念もなく続けても、得られるものは少なく、失くすものばかりだと思う。
そんな私のもとに、電話が届いた。
駅前の進学塾の講師の空きがあるという、友達からの報告。
私は躊躇わずに、教師との決別を選んだ。
他人の子供に愛情を持つことは、たいへんに難しい。
太陽よりも月のほうが、私には合っていたみたいだ。
転職は、早いほうが良いのだ。
周りのためにも、自分の為にも、子供たちのためにも。
夢は、はやく破れたほうが良いのかもしれない。



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