第147期 #6
これは昔の通販番組の一コマ。
TV画面に映るのは金髪の男女と一体の人形。
「ハァイ。今日はホットな商品をみんなに紹介するわ」
「いったい何を紹介してくれるんだ?」
「それはね。この高性能お手伝いロボット、ファット君よ!」
「ファット君? ずいぶんな名前だな。ほんとにホットな商品名のなのか?」
「当たり前でしょ。これを作ったのはあのサイバティック社よ」
「何だって!? あのサイバティック社か。それなら凄いに違いない」
「そうよ! 玩具ロボット年間販売台数世界一の、あのサイバティック社ですもの」
「ところでサイバティック社が素晴らしいのは十分に分かったんだが、こいつは一体何ができるんだ?」
「よくぞ聞いてくれました。この子はね、何とチョコレートを食べることができるのよ!」
「ああ、そうなんだ」
「あら? 反応が薄いわね。もちろんそれだけじゃないわ」
「やっぱりそうか! 天下のサイバティック社がそんなロボットを作るはずないよな」
「そうよ。あのサイバティック社製のロボットがそんなはずないわ。まぁ見てなさい」
「ワァオ! こいつチョコレートを食っちまったぜ」
「それはさっき説明したはずよ。まだ驚くのは早いわ」
「おいおい信じられないぜ。こいつ動き出したぞ、まるで人間みたいだ」
「それだけじゃないわよ。ファット君、そこにある本を持ってきてちょうだい」
「どうなってるんだ! 本当に本を持ってきたぞ。こいつ人間の言うことがわかるのか?」
「そうよ。このファット君は高性能AIを搭載しているから人間の言うことは何でも理解できるわ」
「おいおい冗談はよせよ。僕はいつから近未来にワープししたんだよ」
「さらに、ファット君の動力源はチョコレート。サイバティック社の新技術によって食べ物ならなんでも直接原料として発電することができるようになったの」
「てことは、コンセントがいらないし、充電の必要もないんだね」
「そうなの。このファットッ君はチョコレートをあげれば、その分だけ働いてくれるの」
「それはすごいな。一家に一台は欲しいね。さっそく僕も買おうかな」
「慌てないの。まだ値段を言ってないじゃない」
「おっとそうだった。でもこんなに高性能なんだ、高いんだろ?」
「そんなことないわ。今なら――」
――それから数十年後、機械が人間と同様の消費する時代が到来した