第140期 #6

日常

 西暦二一二〇年、太陽系外縁で小型のブラックホールが発見されて大騒ぎになった。

 中学生だった僕も難しいことは分からなかったけど心がワクワクしたことは覚えている。

 高校生の頃、ブラックホールは軌道を変えられ太陽系の仲間となった。

 大学生の頃、ブラックホール周辺にエネルギー転換システムが設置され地球のエネルギー問題は一掃された。

 社会人となり家族を持った頃……
「あなた、今日は燃えるゴミの日だから会社に行くときに集積場へ出して下さいね」
「わかったよ、えーと、明日は燃えないゴミの日だったよな?」
 息子の紙オムツを取り換える妻に見送られマンションの集積場にゴミを出し僕は会社へ向かう
 朝焼けの空に世界の各地からゴミを乗せたロケットがブラックホール目指して飛翔する航跡が幾重にも続いていた。

 そして、時は流れ……
「父さん、母さん……行ってきます。」
 僕と妻は無事に育った息子の背中を見送った
 蒼く澄み切った空の彼方に独特のシルエットを浮かべていたワームホール型ワープ試験宇宙船はブラックホールへ向け旅立って行った。



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