第14期 #3
午後の光の中で、妹がいなくなった。
二人で林に入って、乾いた枯葉を踏んでいた。山ぶどうの茂みの陰を回って、広い道に出たのはわたしだけだった。
ふりかえると木の葉がゆれる。
先回りして帰ったのかと一人で家に戻った。まだ帰っていなかった。
けんかしたわけじゃない。探しておいでと母さんに叱られて、わたしはまた林に入った。さっきよりも少しうすぐらい。
林はからっぽ。
ひとめぐり歩いて、また道に出た。ふりかえると木の葉がゆれる。
妹はきれいな子だから、だれかに深く愛されてしまったんだ。わたしをほしがるものはいない。一人で家へ走った。
やっぱり妹は戻っていなかった。
母さんが替わって探しに出かけた。
あずけられたしゃもじで、鍋の中の煮物をかきまぜながら、妹は戻ってこないと感じていた。きっと、力あるなにかに捕えられたんだ。妹はもう、悲しみにきれいな顔をゆがめることも、心配事の中で老いることもないだろう。季節の煮物を食べることもなく、飢えることもないだろう。白い湯気が空中に消えていく。
窓の外で木の葉がゆれる。