第138期 #12

セックス

 一度や二度ではなく、十二月になると昔の肉体関係者が深夜に電話を掛けてくることがある。彼女たちは年中行事の酒席で酩酊している状態だ。これから家に行っても可いかと訊ねてくる。可いと答える。
 部屋に招き入れ、前段の席でのアルコール量が多ければ水を、少なければ濃い目の熱いコーヒーを飲ませる。
 相手に、
「かわいい」
 と言う。お世辞ではなく、わざわざ来てくれる行動にはかわいげがあると思う。それからセックスをする。

 ゆっくりとキスをして、舌をもうすこし出して欲しいなど、セックスに飢えていた風の演出をしてみる。いまあなたは彼女いないの? と問われたら(実際その時に交際相手がいなかったとしても)恋人はいると答える。そう答えれば、今付き合っている相手よりも昔の貴女の方が良いという意味になると思って。
 相手がこうして私にセックスを提供する理由は、性欲を満たす為なのかセックスを欲しがられるという自己の魅力の確認をしたいのか、理由は不明だが、とにかく今貴女とセックスできることは良いことだということを、私は伝えたいと感じる。
 購入したセックスは冷たいし、酒場で口説いて連れてきた人間との一晩だけのセックスは幼い。こういった言わば拾い物の過去のセックスの再来は、いったいどう位置付けをしたらと思う。プライベート過ぎる用件だから見様見真似で回答を作ることもできず、ただ相手が望む物をお返しするような対応になってしまう。
 判断材料がない。
 相手と同じく酒を呑んでいれば欲に耽られるのかもしれない。

 男性器を舐められた後、女性器を舐めて、相手に陰茎を埋めて腰を振りながら相手の表情や下半身の湿度の具合を気にしたりする。観察するのは、相手を楽しませる為でもあるが、すぐに射精しない為でもある。けれどあまり客観的になりすぎると勃起が弱くなる。理性と快楽の塩梅が難しい。
 挿入までが長すぎたりもあり相手の酔いが醒めてきてしまってこのセックスが彼女にとって善い価値を持たなくなっては嫌だなと不安に感じ始め、相手に覆いかぶさる密着正常位で、乳房を鷲掴みにして盛りあがった肉の先端の乳首をつまみ、膣内での動きを速めて射精する。相手の頭を抱きしめる。
 そうしたら相手が、
「最後は誰でも動きが加速するんだね」
 と言った。この時になって初めて、誰かのセックスを私のセックスと比べたかったのかと分かる。
 私は、
「気持ち良かった」
 と答えた。



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