第136期 #7

親戚付き合い

 家康は最寄り駅近くの人妻と関係を持った。もちろん彼女は家康の妻の妹である。家康は妻と娘、息子の四人で三十年ローンで購入した四LDKのマンションに住んでいた。駅を挟んで自宅マンションと対をなす区域には商店街があり、商店街を通り過ぎた辺りからは乾いた景色が続いた。乾いた景色とは元々その地に住んでいた人間の住処のことであり、新築の艶っぽい建築ではなく、半ば崩れかけた建物も含め区域全体が乾いて見えたのである。妻の妹はその乾いた場所にいた。家康との関係はもっぱら隣町近くのファッションホテルであり、妻の聡子もそのことに薄々感づいてはいたが、聡子自身も町内の本屋亭主と関係があったので、夫婦はお互い表面上の関係を保っていられたのである。
 聡子の娘、康子はそんな両親の存在を疎ましく念い、読書好きな弟の信長に愚痴をこぼしていたが極度の騎乗位好きであった。もちろん彼氏一郎よりも一郎の弟との関係の方に興奮した。そしてバイブレーターも好きである。
 信長はそんな姉に対して一瞬嫌悪感を示すも、まあ親も親だと半ばあきれてリビングでのマスターベーションにいそしむのである。これから四回目の射精で、ペニスには既に痛みがあった。信長は駅前のパチンコ屋の換金所の女が信長のような高校生を貪り食うことを知っている。換金所の女であるから顔は見えない。歳も分からない。もちろんこれは都市伝説的な想像でもあったが、そして大学にいったら堂々と換金の際、女に自身のアドレスを紙片で渡すのである。顔が見えない分、想像はどうとでもなり結句は三十代後半の流行女優のものに落ち着いた。女と関係を持って果てる前、やはりペニスは痛いままなのである。残尿感のように果てた瞬間を手で受け止め、やがて換金所の女に扮した女優の顔に靄がかかりはじめ、もうやめようと昨日と同じく射精後に思った。
 次郎と信長は同学年である。中学は一緒だったものの、同じクラスにはならなかった。高校は別々である。次郎は本屋の次男である。次郎は信長の従兄弟である。次郎の母は信長の母の妹である。次郎の父は読書好きの寡黙であったが、次郎は活発であり、それは母に似たものだと考えていた。しかし、実際の母、佳子は内向的な傾向が強く、顔は聡子と瓜二つである。佳子は家計を支えるためパチンコの換金業者で週三日のパートをしているが、自身はパチンコをしたことがなかった。



Copyright © 2014 岩西 健治 / 編集: 短編