第136期 #2
現実で生きるのは怖い。
誰かは言った。
現実で辛いことがあるからこそ夢は淡く、そして儚く映るのだと。
だけど。
夢で生きるのも、わたしは怖い。
夢はいつかは覚める。わたし達は心のどこかでそう確信している。
誰かに言われた訳ではないが、何故だかそう思っている。
では、もし夢がいつまでも覚めなかったとしたら?
夢と現実の区別がつかなくなったとき、わたしは生きる意味を失う気がした。
そしていつしか眠ることがとても恐ろしい行為のように感じるようになった。
眠るということは何か無防備なもののように思えてならない。
暗闇のなかで息を潜めているなにかに自分をさらけ出しているような。
今すぐにでもその柔らかい首筋に爪を立てて引き裂かれてしまうような。
わたしはただ自分の存在を確立したくないだけなのだ。
覚めない夢、だなんてそんな甘い響き馬鹿げている。
「皆都合のいいように夢と現実を行ったり来たりしている」
その中で必死に自分を見つけ出して留めようとしている。
そうでもしないと人は境界線が無くなり人としての意義を失う。
お互いが依存し、緩い繋がりで抱きしめ合いすがりつこうとしている。
いつかはそれも切れてしまうかもしれないのに。
人はなんども修復して結びつける。
「ひとは本当に疲れるいきものだ」
存在を認めてしまえば誰かと繋がざるおえなくなる。
ひとりは楽にちがいない?
「ひとりは別に悲しいことじゃない」
ただ自分を客観視できないだけ。
それゆえに傲慢になってしまう。
「だから、やがてひとりになる」
孤高の王様のようにただ孤独の玉座に座るだけならどんなに気が楽だろう。
残念なことに機械とは違い人間には感情が存在する。
悲しみ、虚しさやがてそれは自己を狂わせてしまう。
本当に人間という生き物はややこしい。
言葉では辛いと他人を拒否しつつも本当は誰かの助けを必死に求めている。
優しい手のぬくもりを感じたい。
それだけで人は自分の存在を確信する。
「現実のあなたは夢のあなたとは違う」
それは常に隣り合わせだが、一番遠い位置にある。
決して交わってはいけない。
それは意思であり自分ではないのだから。
夢はいいものだ。
現実を忘れさせてくれる。
だが終わらない物語はないように夢にも必ず終わりがある。
夢にいつまでも浸っていたら、それは死んでいるも同然だ。
人は他者がいなければ存在出来ない。
それは至極当たり前のことだ。
「血を通わせているのは、『あなた』なのだから」