第134期 #2

二人の男が賭けをした。

ある狭い一室で今日も行われる賭け、彼らは水槽の中に飼われた金魚二匹が、どちらが先に死ぬかを賭けていた。
勝ったとしても賞金は無い、負けたとしても罰はない、それなのに二人は賭けをする。
黒い出目金と赤い金魚が水中を舞う、その姿は当たり前だと言えばそれまで、しかし彼等にとっては神秘的に見える物だった。
狭い空間で行われる舞いは金魚が死ぬその時まで、短い年数で長い時間続けられる。

「ここは狭い」

「あぁここは酷く狭いね、僕はここから出ようと思う。君も一緒にどうだい?」

「俺は遠慮しておく、あまり気乗りしないし」

「そうかい? じゃあ僕はあそこのドアから出ていくよ、戻ってくる時は土産でも買ってくるよ」

「それは嬉しいな、楽しみに待ってるよ」

黒い金魚に掛けていた男がドアノブに手をかける、ドアが開かれた細い隙間から黒い銃口が覗いた、一瞬咲いた赤い花がもう一人の男を染めていく。
黒い金魚の舞いがピタリと止むと、腹を上にして水面に浮かぶ、外から聞こえる歓声は賭けに勝った事を喜んでいた。



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