第133期 #7

ハイ・ファイ

ごめんなさい、今週の最下位は乙女座のあなた、仕事上のトラブルに気をつけて。でも大丈夫、乙女座のあなたのラッキーアイテムは七面鳥をじっくり焼いて醤油、オイスターソースなどをあわせた特製のたれを塗りさらに焼いたテリテリの皮の部分を、まずはナイフで切って香菜を包んで口に運び、思い切り噛むでもなし、ゆっくりと舌でもてあそぶように舐り噛んだときに、その上質の油分がじゅるんと染みでてきてやや、舌上の魔術師の異名を持つ彼と対面する。おぬし、何者なりと怒鳴り声を上げるのは七面鳥で、彼は我こそは味覚なりと応える。雷は空高く、鳴り響き、大粒の雨が頬を伝い落ちていく。七面鳥は旗を振り上げて、攻撃開始の合図を送る。怒号とともに駆け出す七面鳥の群れ、こっこ、こっこ、こっこ、とくちばしでもって味覚をつつくつつく。たまらん、と逃げ出す味覚。逃げ場所はもうなく、うしろは断崖絶壁、これぞまさに四面楚歌よのお、と余裕を見せて味覚、口笛を吹いている。なんだ、追いつめられてなおその余裕はなんなのだ、と七面鳥の群れとしても不気味に感じて、一旦停止。味覚は深く息を吐き、ぴょんと飛び上がる。ちょうどやってきていたヘリから垂らされた縄梯子につかまってあれよ。さらば七面鳥よ、これがわしのやり方じゃい、と味覚は瞬く間に小さく小さく豆粒ぐらいになっていく。まま、あっけにとられて七面鳥、追え!追え!と言うもむなしくその羽をはたはたとふるわせるのみ、いってらっしゃい。



Copyright © 2013 なゆら / 編集: 短編