第133期 #13
私は今まで人を騙して生きてきた。それは騙すことにより自分が必要とされている気分になるからだ。
沢山本を読み、小説家にないたいと思ったことが何度もある。
ただ人が読んで面白いと思う文章を書く自信はない。
伝えたいこともさほどなく、ただ時間があるとノートに何かを書いてしまう。私は綺麗な字が書ける。それだけが唯一の自慢。
誰かを惹きつける能力があれば、もっと楽に効率良く稼げるのではないか。基本的に私は働きたくない。一生何もせず楽してくらしたい。
でも、人生はなかなかそう簡単にはいかず、どこか無理して嫌々ながら上司に理不尽に怒鳴られ給料をもらって生活するのだ。
ただ、私にはそれは出来ない。何かに縛られるのが苦手で、ましてやその中で頭を下げ給料をもらうなんて1ミリもできる自信がない。その前に私を採用する会社はないだろう。
私には特別な夢もなく野心もない。普通が一番よ!と言いながら普通以下の暮らしをしている。それを恥ずかしいと思うこともないし、自分の人生を悪いとも思わない。
こんな私の小説を誰か読みたいと思うのだろうか。
世の中には変わり者が結構な割合でいるから、もしかしたら私にもチャンスが巡ってくるかもしれない。
まずはどうやって小説家になれるにか調べよう。出来るだけ楽な方法で。
私が用意できるものは、書き味のいいボールペンと安いノートだけだ。
誰か私に騙されてくれないか。とにかく楽をして金を稼ぎたい。