第131期 #7
突然、老婆が目を閉じた。唇を突き出している。頬がかすかに赤い。ニコフはもぞもぞと胸がざわつくのを感じた。さっきまでの当たり障りのない会話はなんだったのだ。ニコフは混乱した。同時に欲望がむくむく隆起する。突然、ニコフはつり下げてある斧を手に取った。乱暴に動いたことで老婆は目を開ける。老婆の目に、ニコフが斧を持っているのが映る。老婆はうなずいた。ニコフは斧を振り上げる。老婆はふたたび目を閉じる。やはり唇を突き出す。この期におよんで、とニコフは欲望の渦に飲み込まれそうになる。飲み込まれてしまっても別にかまわないか、とまで考える。斧がきらりんと鳴る。突然、階段を駆け上ってくる音。ニコフは斧を振り下ろす。ぶしゃ、と潰れる老婆。老婆の身体の芯の部分が飛び出てくる。それはてらんてらんテカっていて綺麗。ニコフはそれをつかみにゅーんと抜き取る。老婆の残りからしゅんしゅんしゅーうと湯気が吹き出ていく。ニコフがにぎった芯は三日月形をしていて先が尖っている。突然、ドアが開いて、飛び込んでくるのはソーニャ。ソーニャはニコフに抱きつき、三日月形の老婆の芯を舐る。ざまあみろ、とソーニャは囁く。ついてきた犬は老婆の残りを貪る。ニコフは斧を捨て、芯を持ち、ソーニャを抱く。ソーニャの身体は柔らかくて気持ちいい。突然、物語は終わる。ニコフもソーニャも老婆も犬も唖然として舞台袖を見る。そこには何もない。静寂と漆黒。まず吠えるのが犬、なんといっても知能が低いからね。空気を読まずになんか嫌な空気に耐えられず吠える。さらに走り出す。いや焦燥感に駆られてさ、と後で語る。追いかけるソーニャ、まてまて、とニコフ。老婆もいるよ。ヤシの木の下でみんながぐるぐる走る。あんまり早く走るものだから、そのうちにどろどろに溶けてバターが出来上がった。これを使って一儲けしようかい、とヤシの木の上で見物していた黒人の子ども。バターの中のソーニャの部分をぺろんと舐めて、なんかこれ、しょんべん臭いや。バターになってもなお老婆の芯は三日月型で、尖っていて、黒人の子どもの指を深く切り裂く。なんで?なんでこの老婆、あたしのために、まさか!まさか生き別れた・・・。突然流れ出す涙によって塩味が加味。絶妙のバランスですっごく美味しいと地元のお母さん方の評判がよく、品切れ続出、問い合わせ殺到。黒人の子どもうはうは。