第13期 #6
もう1人振りまわしていたのは彼で、にやにや笑っていた。私はにたにたと笑いを奴に返しながら憎しみに燃え、鉄の棒を振りまわし続ける。二人の狂人が5月に鉄の棒を振りまわしている。勝利への貪欲な微笑、そして狂気。勝ち誇った高らかな笑いを聞く負け犬には死よりも恐ろしい、狂気。どうすれば勝てるのか、何を争うのか、狂人達は知らない。鉄の棒を頭の上でぶんぶん回しながらヘリコプターを思い出す。あれはまだ少年の頃、ヘリコプターに乗ったのは。時と共に薄れた何か。そして時と共に濃くなる狂気の気配がぶんぶんと唸っている。ふいに正気が姿を現す。やめようと思う理性。私は狂気から逃げる。現実に駆け出す。しかし逃げだす私を天から見下ろす私にはもはや。狂気から逃げる私自身が狂気で、狂気が、狂気にむなしく変わりゆく。不意に聞こえる絶叫。私の鉄棒が奴に当たる。頭を押さえて唸る彼。鉄の棒をまわし続ける私。彼が動かなくなったのに気づいた時。一体勝ったのは誰なのか。