第129期 #12

満足の穴

 ここはどこだ? 僕は誰?
 自分探しにうち悩みながら袖机の一番上の抽斗を引いた。そこに日記帳がある。けれど昨日までにはなかった穴がそこに空いていた。すぐさま心の癒しのために膝の上に置いておいた好奇心旺盛な飼猫ちゃんが穴にダイブ。
 その瞬間に僕はその穴に命を落とすと願いごとが叶うと分かった。僕は、死ななくなりますようにと願った。それから嫌いな父母を穴に叩き落とした。気まずかったので生き返らせた。でも気に食わないのでまた殺した。ついでに姉も殺して立派な黄金の寺院を作り家族の位牌をそこに置き、日本国民がお正月に参拝させるように仕組むと不思議と善いことをした気分になった。
 僕の家族問題は落ち着いた。人生つまんない。それから百年経った。

 僕が、性別を女に変え年齢を少女にし、王冠を被ったかわいいお人形さんの格好をして椅子に座って膝の上で飼猫(九九九回よみがえらせた猫様)を撫でていた時だった。侵入者があった。
「おまえか」
「誰だおまえたちは」
 僕は侵入者たちの銃弾に倒れた。首を切り落とされ穴にポイされた。僕の指図どおりだった。これも穴で叶えた僕の願いだ。僕の意識は空の上。これで僕はいないことになり、宇宙から地球を眺める。僕の、他人より一枚上の身分は、あの穴を最初に見つけた時から始まって終わりまでそのままなのだ。これが僕の神様化計画。

 正直、一六歳で穴を見つけた僕は未熟だったと思う。正直、政治を変えたら戦争が起きた。正直、画期的な発明で伝染病を根絶させても戦争が起きた。正直、自分の欲望のために女を無差別に抱いたり、でたらめな世界。正直、僕は愚かだった。だから僕以外の誰かに穴を運用してもらうことにした。願わくば優秀な人に。

 僕を殺したのはある国のある人たちで、ある人たちはまず穴を自分たちの利権のために使った。そのうち内部で争いが起きて穴はまた違う国の物になったりした。画期的なアイディアを思いつく人もいて、それは建築や音楽や文化を発展させることによって穴以上に満足させるものを生み出すことを考えついた人たちだ。
 命と引き換えにもたらされた文化は、宇宙にいる僕をもうっとりさせた。後悔、罪悪感、喜怒哀楽。すべてが溶けて消えた。ただすぐにまた人々は穴に頼ろうとしだす。ああやっぱり人間は終わりなんだ。
 僕は人のカタチに戻って自ら満足の穴に入り、死を願った。さようなら。
 穴は僕の子供に引き継ぎます。



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