第128期 #3

迷宮

 私は、気付けば迷宮に居た。
 薄暗い廊下だった。だが、その空間はねじれ曲がっていた。天井は私の足の下に存在し、床は私の頭上1m程の所にあった。
 奥の方から、上下が反対になった招き猫が歩いて来た。身長は100m程だった。何故こんな巨体が、この廊下に収まり切るのだろうか。私は自分の足元を見た。床は先程までの場所には無く、私の足の下には、もはや何も無かった。
 天井(いや、この場合、床と言った方が正しいだろう)を突き破り、恐竜が現れた。音はしなかった。招き猫が、恐竜に歩み寄った。招き猫が1歩足を踏み出す度に、ドシン、ドシンと言う轟音が響いた。その音は、筒抜けの私の足元へ抜けていった。音は消えては鳴り、また消えては鳴りと言う繰り返しで、廊下に反響していた。
 恐竜が、招き猫に食らいついた。招き猫の頭が、潰れた。中から、白い豆腐のような脳味噌が溢れ出した。それと共に、緑色の血液が私に掛かり、蒸発した。緑の血は、天井の位置にある床に張り付き、アメーバのように変化した。
 恐竜は招き猫を食い尽くすと、ちょんまげの力士に変わった。私に飛びかかった。私は6000万m程の長さの足で、力士を蹴った。力士は廊下の壁に吹っ飛び、ぐちゃぐちゃになって消えた。
 嗚呼、今日は私の頭は狂っているようだ。少し、寝る事にしよう。
 私は、横になり、目をつぶった。

私は、気付けば迷宮に居た。



Copyright © 2013 悠介 / 編集: 短編