第126期 #5
夜遅く仕事から家に帰った。
すでに午前2時を過ぎていた。疲れている。
車から重い体をゆっくりと引き摺り出す。
風にもならない空気の動きが心地よい。
物音ひとつしない黒く塗り潰された、いつもの風景に安堵する。
ふと夜空を見上げる。真円の月が目に映った。
月を取り囲むように星が輝いていた。
心を洗われるように美しかった。
ふと思う。私はいつまで、この美しい月や星を
見ることができるのだろう。
そりゃ生きてさえいれば、いつだって見られるさ、
月や星くらい。
じゃ私はいつまで生きるんだ?
そんなこと誰にもわかるはずがないだろう。
確かに・・・
ただこれだけは言える。
たとえ私の命が尽きようと、月や星の輝きは今と
何ら変わるはずもない。
それどころか、今も世界のどこかで起きている、
戦争や天災で、どれほど多くの人の命が散り果てようと、
夜空の美しさは、何も変わることはない。
そして空から、静かに地球の人間の生き様を見ている。
いつまでも・・・