第125期 #12

盗聴

 日本の法律では、盗聴器の販売・購入は違法ではありません。
 一般に「盗聴器」と呼ばれていますが、基本的には微弱な電波を発信する「送信機」として扱われています。
「盗聴器」からの電波を受信して会話を聞くこと自体は、携帯ラジオからラジオ放送を聞くこととなんら変わりありません。※一参照。
 盗聴により知り得た情報を、第三者に漏らしたり、公表したりすると、電波法第五十九条(秘密の保護)により罰せられますのでご注意願います。※二及び三参照。
「盗聴器」を仕掛ける際に、許可なく他人の住居等に侵入すると、刑法百三十条(住居侵入罪)により罰せられますのでご注意願います。※四参照。

 ※一、電波法第四条(無線局の開設)
 無線局を開設しようとする者は、郵政大臣の免許を受けなければならない。ただし、発射する電波が著しく微弱な無線局で郵政省令で定めるものについてはこの限りではない。

 ※二、電波法第五十九条(秘密の保護)
 何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、またはこれを窃用してはならない。

 ※三、電波法第百九条(第五十九条の罰則規定)
 無線局の取り扱い中に係る無線通信の秘密を漏らし、または窃用した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 ※四、刑法百三十条(住居侵入罪)
 理由なく、他人の住居または人が看守する邸宅、建造物に侵入し、または要求を受けてもその場所から退去しない者は、三年以下の懲役または十万円以下の罰金に処する。

 平日の日向は少しずつわたしの心を穏やかに潤していく。たいして何も変わらない毎日なのに、生きてて良かったなんて思ってもいいかなって少し考える。この時間、この駅に降りる人はまばらで、わたしが降りた地下鉄は扉を閉めると、モーター音を響かせながら地上から地下へとスムースに潜っていった。
 サトシの住むワンルームはこの駅から歩いて一〇分程。現在無職のわたしは、合鍵でサトシのいないサトシのワンルームへ静かに入った。内側から鍵を掛け、大きく一つ深呼吸をする。サトシの匂いがわたしを包み込む。男くさい、サトシの生活臭は決して嫌な匂いではなかった。遠くでクラクションが鳴る。それに反響したわたしの鼓動が、体の内側から外側へと激しく溢れ出す。
 これからわたしは「盗聴器」を仕掛ける。



Copyright © 2013 岩西 健治 / 編集: 短編