第122期 #6
「さようなら時藤君、私けっこう好きだったんだよ?どうしてもうちょっと話しかけてくれなかったかなぁ」
微笑みながら彼女はいった。ごめんな何も出来ない僕で。―もう体も動かせないようだ。
「よぉ時藤、お前なんでこの前遊びいく約束ドタキャンしたんだよ、突っ込みがいなくて締りが悪かったんだからな!今度はちゃんと来いよ、じゃあな。」
いつものように右手を額の高さまであげてニカッと笑って彼はいった。お前みたいな物好きも居たもんだな、こんな僕を必要としてくれたなんて。お前のおかげで高校生活が少し光を帯びたよ。―目の前は暗く淀んでいく
「全く、ときとー君はそれでも男子委員長なの?仕事、君の分まで頑張ったんだからね?どうしてそんなに休むのよ。本当にもう…。今度サボったらもう手伝ってあげないんだから!じゃあね、バイバイ。」
切なげな目を静かに閉じて彼女はいった―とっても優しそうに。いつもと同じで、最後の最後まで叱られちゃったな、ありがとう委員長。―重かった体が段々と浮遊感を感じるようになる、そろそろか。
「おい時藤!おれようやく全国大会出れるようになったんだからな!もうお前には負けないぜ!今度俺の試合見に来いよ、ぶっちぎる所見せてやっからさ。じゃあまたな!」
元気良く腕まで振りながら彼はいった。やる気がある奴が最後には勝つのさ、お前はたいしたやつだったよ。ありがとう、あとごめんお前の試合見にいけないや。―暗かった周りが段々光に照らされていく、暖かい。
「時藤!」「時藤君!」「時とーう」「ときとー」「時藤ちゃん!」「とっきー」「おーい!」「ときとう!」「ときとう」「トキトウ」「トキトー」「トキトウ」時藤時藤時藤時藤ときとうときとうときとうトキトウトキトウトキトウトキトウトキトートキトートキトートキトートキトートキトウトキトウトキトートキトウトキトウトキトー
「さよなら、みんな。」
これで全員か、あっという間だったな。
これで本当にさよならだな。
あの日々はもう帰ってこない
「さよなら」
血に濡れたクラスメイト全員の亡骸にお別れをする。
3年7組総勢39名
―生き残ったのは僕一人