第121期 #15
わたしは粘土で作られて、中には何もなくがらんどう。肘や膝などの継ぎ目には、球体の関節が嵌められている。赤い唇を引き結んで、生意気そうな表情を象って。羽織った着物を着くずして、襟を合わさず、帯も締めず、白くささやかな胸をさらしている。
淫靡に見えるよう、背徳が芽生えるよう、わたしの肢体は幼い。ゆるやかにふくらんだ胸の先はつんと尖らせてあって、桜の花のやわらかな色を塗られている。胸の左側は長い黒髪に半ば隠されて、けれどその隙間から覗く淡い色は、隠されながらの色だからこそいやらしい。
指先が触れる。怯えを見せる人差し指がわたしの頬へ。ゆるゆるとすべらせて細い首を、幼さを深く匂わせる肩の窪みをなぞり、名残惜しく離れていく。指先の主はわたしに愛おしげな目を向けるけれど、わたしの目は不機嫌そうで、ただ何もない空間を見つめている。それはきっと嘲りや蔑みや、儚さやさみしさといったもののしるしだろう。
わたしの持ち主はこんなわたしを大事にする。大切にする。愛しているのかもしれないね。もしかしたら。
だからわたしは幼く生意気そうなままで。不機嫌な目を虚空に向けたままで。わたしに触れる人が望む姿のままで。