第120期 #2

悪夢に挑んだ男

男は崖から堕ちる夢を見た

しかし其の例えは
唯の結果論に過ぎない事だと 男は気づいていた

なぜなら其の答えは 数ヶ月の月日(とき)を経て
日毎に男へと 夢の真理を辿らせたからである

男には生きる為の理由が在った 守るべきものが在った
助けねばならないものが在った

男は再び 崖から堕ちる夢を見た

しかし ≪堕ちる夢≫ と云う表現は
その男にとって馴染まぬ言葉であり
また 其の見た夢に対して 不適切だと違和感を覚えさせた

≪堕ちる≫と云う事は 何かから従わされたと云う事
≪堕ちる≫と云う事は 何かから抗うと云う事

男は一体 自分は 何に 抗っているのだろうかと 疑心した

其の夢は日毎に男へと 真理を辿らせ 伝えてくる

そして 数ヶ月の月日(とき)を経て
男は大切なものを 闇に奪われる

男は絶望した

しかし男は 其の波に抗い 立ち上がる....

男は昔見た 或の夢を憶い出す

男は 崖から堕ちるのではなく
自ら 飛び降りたのであると......



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