第12期 #16
重大な故障が見つかり俺の乗っていたロケットはその惑星に不時着した途端、二度と動かないガラクタになってしまった。地球へ帰るロケットを奪うためにその惑星で初めて出会った人間に光線銃を突きつけた。
「この星ではロケットのような貴重な物は一人乗り用の物が一台あるだけです。その一台もあなたのような地球へ帰ろうにも帰れない人達によって今、中央の広場で奪い合いになっているんです。頼むから撃たないで。」
この星の人間は光線銃を持っていないのか両手を挙げて泣き叫ぶように俺に話した。それが本当なら一大事だ。早くしないと俺が乗るはずのロケットが誰かに奪われてしまう。こんなつまらない星で一生を終えてたまるか、地球へ帰るのは俺だ。
中央の広場に急いで駆けつけるとそこにはもうすでにこの星の住民によって人だかりが出来ていた。人だかりを割って広場の中央に進むと綺麗な水しぶきを上げる噴水の前で三人の男達が盛んに言い争いをしていた。髭の男、痩せた男、太った男、そしてどこから駆けつけたのだろうか司会のような服を着た男がしきりに男達をなだめていた。
「待て!ロケットに乗るのは俺だ!」
俺が周りの注意を引きつけるようにそう言い放つと三人の男は一斉に俺の方を向いて何かを言おうとしていたが、その前に俺は光線銃の引き金を引いていた。三人の男達が焦げた死体となるのに時間はかからなかった。どこからかこの星の子供の声が俺に向かって、
「卑怯者!」
そう叫んだ。そして俺が卑屈な笑みを浮かべながら声の方に銃口を向けようとした瞬間、俺の体は炎に包まれていた。驚き振り返るとさっきまで男達をなだめていた司会が卑屈な笑みを浮かべながら立っている。右手には光線銃。
まさか、お前も地球へ?この・・・卑怯・・・者・・・
「これで帰れる!地球に帰るのは俺だ!」
司会が笑う中央の広場の遥か上空で、まだ炎を上げ続けている男がこの惑星で初めて出会った人間は騒ぎの隙に盗んだこの星唯一の貴重なロケットの中でそう叫び、迫り来る遥かな宇宙に向けて卑屈な笑みを浮かべた。