第119期 #6

好きです

どうしてあんな勘違いをしたのかと思う。用心していたはずなのになのに、何故そのまま突っ込んでしまったのか。
避けて通れたはずのことを思い出して、私は湯船の中に沈み込んだ。

なんだかんだ言って、結局は私も焦っていたということなんだろう。周りがみんな結婚していく中、私はまだ先でいいなんて、まだ仕事していたいなんて、結局はただの負け惜しみだったということだ。そうでなければ、あんな年の離れた彼の誘いにホイホイ乗ったりはしなかったはずだ。
思い出しては、ホント自分の阿呆さに涙が出てくる。

始めはからかわれているだと思って、相手にもしなかった。何かにつけてちょっかいを出してくるのだ。そんなことで、お姉さんがフラフラついてくると思ったら大間違いですよ、坊や。とまで思っていた。
それが、半年前位前から、セクハラですか?! と思うほど、ベタベタ触るようになってきた。
始めは手が触れる程度だったのに、最近では普通に手を握って私を引きづり回す。
並んで座ると必要以上に引っ付いてくる。周りから見えなければ、膝や太ももを触ってくることもある。
そこまできたら、ただのセクハラでしかないのだが、彼が年下ということもあって遊ばれているんだと思っていた。
ただ、そんなことが続いたら、もしかして? なんて思ってしまうじゃない。それでも、いやいやそれは自意識過剰ってもんじゃない? と思って自制してきたはずだった。
なのに……。
そんなことを繰り返しているうちに、私が彼に惹かれてしまったのだ。なんて単純な女なんだろうと、自分で自分にうんざりする。

今日、彼が彼女と歩いているのを見かけた。ずっと彼女なんていませんよ、なんて言ってたくせに。
私の失恋は確定した。年齢のせいか、自分の勝手な妄想のせいか、衝撃は大きかった。

お風呂から出て、テーブルの上に放り出した携帯を見ると、着信があったことを伝えている。携帯を開くとものすごい数のメールと電話が入っていた。どれも彼からのものだ。彼女ができて嬉しくなって連絡してきたのか? どこまでも子供だな、と思いながら、メールを開く。とにかく電話が欲しい、とだけ書いてあった。が、最後の1通は、吹き出してしまった。画面の文字は淡白なのに、その向こう側に彼の必死さが見えた。どこかで私が見かけたことを知ったのだろう。たくさんの言い訳が書いてある。そして、最後に

「好きです。僕のお嫁さんになってください」



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