第116期 #6
レオナは十二歳、いつもゆったりしたガウンを羽織っていた。腰まで届く長く伸ばした髪は雪のように白かった。瞳は薄い緑色で、光の加減で黄金に輝いて見えることもあった。
四年前、ヒロの父親がレオナの命を救ったのだけれど、彼の死後、レオナの感謝の気持ちは父親から息子へ自然に引き継がれた。レオナは心からヒロを慕っていたし、まったくはにかむことなく人前でそれを公言した。
ある日、地球からの転校生ルイがグライダーマンの家の夕食に招待された。レオナも夕食会に出席して、食事の間中ずっと冷たい目で地球人の女を見つめていた。
夕食後、みなが庭に出た。よく晴れた満天の星空の下、子供たちには甘菓子とジュースが、大人たちには酒が配られた。ニムルを庭に並べて、それに座って親しい人たちとくつろぐひととき――だが、カイは息子のヒロを呼びつけて言った。
「あなたはウサギ小屋の掃除をしなさい。あした、新しいウサギが入荷するから」
「うん」
とヒロはうなずいた。
横にいたロギノが言った。
「後でぼくがやっておくよ。そんなに大した数じゃないから」
「だめよ、ヒロに仕事をやらせてちょうだい。ヒロはもう十四なのよ。仕事を覚えなきゃ。グライダーマンというだけでは、一円も稼げやしないのよ」
「ぼくはやるって言ったよ」
とヒロ。
「じゃあ、一緒にやろう。二人でやればすぐに済むよ」
ロギノはそう言ってヒロにウインクした。
「はい、父さん」
二人がウサギ小屋へ行こうとしたとき、一瞬、あたりがパッと明るくなった。
「見て!」
マチルダが夜空を指差した。
大きな火の玉が空を横切っていった。
「また隕石かな」
とシゲが言った。
全員が見つめる中、火の玉は地平線に落ちるまでずいぶん長く輝き続けた。
立ち止まって空を見上げていたロギノに、グラハムじいさんが言った。
「ラジオをつけてみろよ、ロギノ。何か言っとるかもしれん」
ロギノは家の中からラジオを持ち出してきた。ラジオのまわりに人が集まってきた。ロギノはラジオの電源を入れ、いくつかの周波数を試してみた。ほどなくニュースをやっている局が見つかった。
「速報です。地球からの宇宙船が周回軌道上で爆発しました。乗客乗員は全員死亡した模様。原因はまだわかっていません……」
少し離れたところにいたレオナがヒロを目指して一直線に駆け寄ってきて抱きついた。
「ヒロ、私、恐い」
「大丈夫だよ」
ヒロはレオナを優しく慰めた。