第116期 #10

敗北

O 納豆の卵とじ食べ昼餉には冷やし中華で夜には餃子(2012年5月5日(土))
 私は上の短歌で短歌コンテストの2等賞を取った。1等賞の短歌は
O 痛み来てシャッター切られ魂は三途の川へ旅立って逝く したまわる
 と言う短歌だった。選者評によると
O 恣意川君(私の名前だ)の短歌は日常の一コマを切り取った実に滋味掬すべき短歌であるが、矢張り私にはしたまわる君の短歌の非日常的な魂の短歌とでも言うべきものに将来性を感じてその将来性を買った。
 と言う評に私は負けたのだった。
 私は懲りずに再び同じコンテストに応募した。
O 母と行く喫茶店には鈴木君茶色の服が印象的かな(2012年5月6日(日))
 と言う短歌だったが再びしたまわる君に負けた
O 痛すぎてシャッター3回今日の日は祖母の家行く母と一緒に(2012年5月7日(月)) したまわる
 選者の評によると
 したまわる君はその日パソコンに向かって居て13時35分から始まった「旅行作家茶屋次郎4熊野川殺人事件」を見ていた。13時30分から始まった「7人の敵がいる」も見たかったのだがしょうがなかった。そしてシャッター音。15時近くに再びシャッター音。3回目は19時台に夕食の豚しゃぶをほぼ食べ終えて最後の残りの湯豆腐に味噌を付けて食べようとして居る時にシャッター音。その日の夕食は何時も使って居るドレッシングが無くてしたまわる君ちの家のオリジナルドレッシングをかけて豚しゃぶを食べたのだった。(ポン酢に胡麻を混ぜたドレッシング)。実にすばらしい短歌である。恣意川君の短歌は論ずるまでも無い。
 私は完璧に敗北したのだった。 



Copyright © 2012 ロロ=キタカ / 編集: 短編