第115期 #4

私と貴方と時間と地下牢と。

私は、アナタのそばで眠りに落ちる幸せを、確かに感じた。それが私の感じた初めての、幸せだった。

『入ってきた奴は全員殺せ』
そう言われてからずっと私は牢屋に閉じ込められていた。
今まで何人もの人が牢屋に入れられた。私は、それを。
牢屋に入れられるのは、死刑になる人じゃない。私にもよくわからないけど、秘密を知ってしまっただけなんだとか、あいつを本当に心から愛していたのにとか、最期の言葉にそう言った人たちもいた。
知ることや愛することは、それだけで殺されなくちゃいけないのか、殺さなくちゃならないのか。
疑問を感じたこともあった。けれど、なんて思えばいいかは分からなかった。

そんなある時だった。彼がこの牢屋にやってきた。牢の端から、彼は聞いた。
「君は、いくつなの」
とっくに時間なんてものがどうでもよくなっていた私は、自分が何歳かだとか、分からなかったし、どうでもよかった。
「どうでも、いいかな」
「そっか、そうだね」
「…おかしいとか、思わないの」
「例えばどこが」
「知りたいことがどうでもいいってところとか」
「そうかもね、………。」
それきり彼は何も喋らなかった。私もそれきりにして、ただ二人で座っていた。

私、時間なんてものがどうでもよくなっていたの。アナタがくるまで。
「僕はね、」
アナタはふと、まるで大切なことを忘れないように話し始めた。
「国にさ、言われて。沢山のことを調べてきた。僕にとってはどうでもよかったことばっかり。僕はね、今まで自分が知りたいことなんか、分からなかったし、どうでもよかった」
二人きりの暗い暗い地下牢で、私たちはただそこに居た。水のように、錠のように、骨のように、袖のように。握り締めた手はいつからだったろう。
「でもね、」
「君のことは、知りたいと思う」
「…、」
「……わたし、も」
こういうのは、なんて言うのだろう、ずっと動かなかった歯車が、今。軋んで音を立てながらも少しずつ、確実に、動きだした。
ああ、これが、そうか。
罪、かも、しれないね。

やがて、外の人がやってきて、一言、遅い、と言い放ち、私たち二人を躊躇いもなく撃ちます。私は、アナタのそばで眠りに落ちる幸せを、確かに感じた。それが私の感じた初めての、幸せだった。そして私たちはまるで嘘のように、沈むように、消えるように微笑むのですが、それはこれからほんの



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