第112期 #6

ホットなアイドル

 私は皆から熱烈に愛されるアイドル。
 一度私に触れるとなかなか離れられない。
 皆口々に言う。
「あったかいねー」
「癒される」
「最高!」
「だーい好き!」
 いつの間にか私の周りに皆が集まり、天国にでもいるかのように寛いでいる。
 私も皆の笑顔に癒されている。
 皆と共存してこその私なのだから。
「みかんおいしいね」
「何個でも食べられるね」
「食べすぎると顔が黄色くなるよ」
「その話、本当なの?」
 幾度となく交わされる他愛ない会話。
 まさしく私は一家団欒のパイプ役を担っている。
 私は皆のアイドル。
 パパもママも二人の娘も皆私に夢中。
 でも、冬季においてのみ。
 だって、私はこたつなのだから。
 花柄からチェック柄のカバーに衣替えし、気持ちも新たに今日も皆を癒している。
 だって、それが私の使命なのだから。



Copyright © 2012 りんね / 編集: 短編