第112期 #15

ひとりぼっち無差別攻撃

「もしも、世界中の人間の考え方の正しさを縦にランクづけした場合、自分は確実に世界ランキング上位1パーセント以内に入れるとおおむね確信している方」
「もしも、世界中の人間の意見とあなたの意見が違っていた場合、間違っているのはおまえらの方だ! と、最後まで胸をはって言い切る自信をお持ちの方」
「目に映るものすべてが粉々に吹っ飛んで欲しいと願って止まない方」

 以上のうち、いずれか1つ以上の条件に当てはまる方のご応募をお待ちしております。
 給与は、年収800万円〜1200万円くらい。
 ご応募から採用内定までのスケジュールは、通常で2ヶ月程度かかります。
 選考ステップ。書類選考 → 一次面接 → 早押しクイズ → 殺人ロボとの肉弾戦 → 気まぐれ役員による気まぐれ面接(終始リラックスムード) → 念力カードめくり17回戦 → 弊社社長との1対1のにらみ合い(弊社社長を目で殺していただきます)。となります。

「愛媛県からやって参りました。天才チンパンジーのチンパン君と申します。よろしくお願い致します」
チンパンくんは、応募してきたボンクラたちの中で、ダントツで賢かったし、メンタルが強かったし、なによりも、ここぞというときの勝負強さが抜きんでていたため、トップの成績で最終選考までやって来た。
 チンパンくんは、全く緊張していなかった。チンパンくんは、挫折というものを知らないのである。

 時代の波に乗りっぱなしの男、(株)やまもっちゃんコンピューターエンターテインメント代表取締役社長、山本守ノ介にとって、チンパンジーを目で殺すことなんて簡単である。彼は社長になって以来、暇を持て余しているため、今日はチンパンジーを目で殺すことが唯一の仕事だった。
 山本はイライラしていた。刺激的で反骨精神のある人物を社員にしたいと思っていたのだが、やっと最終選考まで来たのがチンパンジー一匹だけだったからだ。
 チンパンくんは終始無表情だった。一時間半が経過した頃、山本は疲れて帰ってしまった。しかたなく、チンパンくんは採用になった。

 でも、チンパンくんは研究所を脱走していたため、次の日連れて帰られてしまった。
 やまもっちゃんコンピューターエンターテインメントは3年後に潰れた。



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