第111期 #4
考察
松井によって試行されたデート招致を平野は全て断ったが、この結果は過去に平野を対象として行われた全実験についていえるものである(戸川 H21、他)。過去の全実験を見てみると、デート招致の試行回数には2回から12回までのばらつきがあり、その全てにおいて招致成功率が0%であるということは、他の女性を対象とした実験の報告内で多く指摘されている「デート招致回数と招致成功率との間には正の相関があるという法則性」(後藤 H5、他)に従っていない。したがって、平野はデートへのお誘いについては全面的棄却を一般的対応とし、上記の法則性を超越した女性であると考えられる。
また一部の報告では「対象女性が実験者を嫌っている場合、デート招致の試行回数に関わらず招致成功率は0%となる」(内村 H5)、さらに「対象女性が実験者を嫌っているか全く関心を抱いていない場合、デート招致の試行回数を増やすことは実験者に対する対象女性の嫌悪感を増幅させる」(内村 H6,H7)ということが指摘されているが、平野は松井に対して良好な感情を抱いているということが予備調査によって明らかにされており(松井 H22)、また今回の実験における64回という試行回数が、松井に対する平野の嫌悪感を増幅させるとは考えられない。
また、今回を含め、これまでの平野を対象とした実験では、デート招致の内容およびシチュエーションに特別な工夫は施されていなかったが、それらの工夫によってデート招致を成功させた例が、他の女性を対象とした実験報告のなかに存在する(戸川 H22)ため、平野対象の場合でも、上記の工夫を施した上でのデート招致を検討してみる価値はあると考えられる。(次こそは!)
指導教官から
客観的視点に基づかれた論述は評価に値する。しかしながら、本報告でデート招致回数と招致成功率との間に対応関係がみられないことについては詳細な考察がなされておらず、これについては高橋(H9)が次のように指摘した法則性の例外を参考にされたい。すなわち、「対象女性に特定の恋人が存在している場合、招致回数-招致成功率の相関関数における係数は0となる」。この指摘を支持している報告は非常に多い(内村 H8、他)ため、精神的打撃リスク軽減のためには、さらなるデート招致試行の前に、平野における恋人の有無を検証する必要があるといえよう。
評価:可
追伸:現実を見なさい。
(内村)