第110期 #4
吐き出された煙が龍と化す。
宙を横滑り、本を読む青年の鼻腔に入り込む。
臭い。青年、ムッとする。煙草を持つ男が目に入る。その右手からひょうひょうと狼煙、立ち昇る。
男、また煙を吐き出す。すかさず青年、扇風機を取り出す。スイッチを入れ、龍に向けて疾風を放つ。風に乗せられた龍、向かい側でくつろぐOLのもとへ。彼女も扇風機を優雅に取り出しスイッチを入れる。店主もここぞとばかりに扇風機を抱える。祭りだと喜ぶ風神が風袋を開く。四方から風が送られる。
逃げ場を失った龍が空へと昇る。上昇気流、男の頭上に暗雲が現れる。雷鳴と共に雨が降り出し、男と煙草をぐしゃぐしゃにした。
一件落着。風神と雷神が笑っている。