第109期 #13
ちゃぽん ちゃぽん
優雅に泳ぐ君のことだから、空も優雅に飛ぶのだろう。水面と呼応するように光をまとう。姿を変えても、ぼくならきっと仲間の中から君を見つけることができるだろう。日差しの中、君と川辺のほとりを舞う日が楽しみだ。
ちゃぽん ちゃぽん
「あっ」
パチン
「イタイなぁ、何?」
彼女の腕で血を吸っていた蚊を殺した。掌に残った死骸は、吸われた血が溢れていた。
「いっぱい吸ってる」
「ほんとだ」
すると、もう一匹蚊が飛んできてボクの掌に止まった。また叩こうかと思ったけど、針を刺す感触はなかった。丁寧に死骸から溢れた血を舐めているようだった。つい見入る。
パチン
ボクの掌の上で今度は彼女が蚊を叩いた。