第108期 #7

ローソンで待ってる

あいつらが寝静まったら、また『ローソン』に行こう。レオンは今日来るのかしら?だいたい本当にあいつ、学校に行ってないのかしら?腕なんか真っ黒に日焼けしてたし、「自宅用の日サロがあるんだよ。深夜の通販で買ったんだ」っていうのも、怪しい。

レオンも学校に行ってない。どのくらい?って聞いたら「20光年くらい。」だって。「光年」は速さの単位なのよ、馬鹿。でも私も馬鹿だから、レオンは「友達」ってことになるのかしら?「友達」だって。うげぇー。タモさんじゃあるまいし、「友達の輪」とか気色悪いし。大体、二人で「輪」なんて作ったら、騎馬戦の下で支えてる人みたいになるし。上に乗る人がいない「馬」なんて本当にマヌケ。

おでんの匂いが、一年中するのよね、ローソンって。いたいた。レオンがゲーム雑誌を立ち読みしている。
「ネクラ!雑誌は買って読め!」
「お、来たな。今日あたり来ると踏んでたよ。ちょっと待って、ここだけ読ませて。」
「ストーカーか?なんで私が来ることを『踏む』んだよ!気持ち悪い。ねえ、ポテチ買って。」
「分かった分かった。ちょっと待って。」

レオンが言う。「ねえねえ、すごい事を思いついたんだけど、聞いてくれる?」
一つはここで食べて、一つは部屋に持って帰ろう。この時間なら、お巡りさんも来ない。コンビニの前で、深夜徘徊。
「君と僕でね、会社を作る。」
「会社?何の?」
「それはこれから考えるとしてさ。とりあえず作るんだよ。そうすりゃ集まる名目もできるじゃない。僕らには競合相手も少ない。チャンスだら!」
何よ「チャンスだら!」って、全然言えてないじゃない!そんなんじゃ、チャンスの方から逃げて行くわよ。
「でも僕たち、学校に行ってないから、きっと相手になんか、されないね。」
「そうかもね」
「何だよー!ポテチ買ってやったろー?少しは励ましたりしてくれてもいいじゃない!そうやって人は支え合うんだぞーう!」
支え合っていつか死んでいくなら、一人でこうやって夜に潜っていた方がいい。
「もうすぐ夜が明けちゃうね。僕らの時間はあまりにも短いよ。昼間の奴らは、僕らの倍は時間を持ってるんだ。不公平だ。」
「そろそろ帰るわ。あの人たちが起きてきちゃう」
「ん?分かった。じゃあまたここで。」
「ポテチありがと。」
また会いましょう。レオン。でももしかしたら、もう二度と会わないかもしれないわね、レオン。早く隠れなきゃ。バイバイ。私の友達。



Copyright © 2011 青井鳥人(あおい とりひと) / 編集: 短編