第107期 #3
正義の味方はいつでもどこでも現れて、困った人を助けてくれるんだよね? 「助けて!」の一声ですぐに駆けつけて、ぼくたちも助けてくれるはずだよね?
それなのに、なぜマーくんばかりを助けるのだろう……。
林間学校の海水浴で、マーくんが溺れたときは「助けて!」の一声で、すぐに正義の味方が駆けつけてマーくんは無事に岸まで辿り着くことができた。
運動会のクラス対抗リレーで、マーくんが転んだときは「助けて!」の一声で、すぐに正義の味方が現れてマーくんは無事にゴールすることができた。
遠足で同級生のアヤちゃんが、お気に入りの麦藁帽子を風にさらわれたときも、マーくんの「助けて!」の一声で正義の味方がやって来て、アヤちゃんの帽子は無事に戻ってきた。
でも、ぜったいにおかしいよ!
だって、マーくんは昨日まで夏休みの宿題がぜんぜん終わってないって言っていたのに、今日になったら何食わぬ顔で「正義の味方に助けてもらったんだ」って言って、すべての宿題が終わっていたんだもの。
そんなのぜったいに正義の味方がすることじゃない! ぼくたちクラスのみんなは、マーくんを取り囲んで問い詰めてやったんだ。
すると、マーくんの「助けて!」の一声で正義の味方が現れた。今度はみんなで正義の味方を取り囲んで、さらに問い詰めてやった。
「これはいったいどういうことなの?!」
「こんなことゆるされると思っているの!?」
「あなたをみそこなったわ!!」
みんなに責めたてられた正義の味方は、最初は戸惑った表情を見せていたけれども、すぐにいつもの冷静さを取り戻して、平然とこう言った。
「キミタチハ、カンチガイシテイル。ワタシハ、マサヨシノミカタダ」