第107期 #2
ある日、ある大学の食堂、ある冴えない青年が、ある美しい女性に声を掛けようとしていた。
頬を赤らめながら。
その青年は、友人達とある賭けをしていた。
その女性が青年の告白に、はい、と答えるかどうか、諭吉を賭けていた。
「こんにちは・・・僕のこと知ってますか。」
その女性は、微笑みを返した。
「ぼ、僕と・・・付き合ってください。」
その女性は、少し驚きの表情を見せ、首を傾げた。
陰で窺っていた友人達は、狂喜した。
暫しの沈黙。
「はい。」
女性は、優しい微笑みと共に、言葉を返した。
暫しの沈黙。
友人達の狂喜は、驚愕へと変わった。
落胆は、する暇がなかった。
青年は、友人達に勝った。
数枚の諭吉を財布にしまう青年に対して、友人の一人が言った。
「驚いた。彼女は君のような人が好みなのか。」
その、侮辱とも言える発言に、青年は答えた。
「僕は、彼女が好みではないね。」
青年曰く。
「だって、諭吉1枚で、あんな芝居に付き合ったんだぜ。」