第107期 #1
昨日、メイドを拾った。
いや、拾ってしまったというべきか……
とにかくメイドを拾ったんだ。
そしたらどうだ、翌朝には……
俺は味噌汁を頭からかぶっていた。
「キャーーー!ごめんなさい!」
慌てて台拭きを取りに行くメイドを見て嫌な予感がした。
「…………動くな」
「ごめんなさい、ごめんなさい!今拭きます!」
台拭きを流しで絞って、こっちに寄って来る。
そして……
「あっ、ひべぶっ!」
何もない所で足を絡ませて転び、床に顔面を打ち付けて変な声を出す。
その時、台拭きはメイドの手を離れ、俺の顔面にベシャッと直撃した。
俺は台拭きが顔から自然に落下するのを待ち、落ちるとポケットからハンカチを出して頭の味噌汁を拭き取る。
一通り具と汁が取れると、俯せ状態で顔だけ上げて目を潤ませるメイドの前に屈んだ。
「す、捨てないでっ……!」
今にも泣き出しそうな声を出すメイドの頭に手を乗せる。
「捨てたりしないさ、お前みたいな人災が世を歩いているなんて想像しただけで、俺は心配で心配で眠れなくなっちまう」
「人災……」
「そうだ……だから、お前を何処に出しても恥ずかしくないメイドに育て上げる」
「ふぇ?」
変な声を出すメイドの手を引き、立ち上がらせる。
「今日から特訓だ、いいな?」
「は、はい!」
一年後、俺は熟練のメイド教官として世に名を馳せる事になった……